ここでは不動産を譲渡したときの譲渡所得について基本的な考え方から、裁決で示されてた譲渡所得の求め方について端的に説明します。
また不動産をいくらで購入したか不明なときに(不動産の取得費が不明なとき)、市街地価格指数を基に取得費を求めたうえで、譲渡所得を算定する方法についても併せてお伝えします。
譲渡所得の計算の仕方
まずは不動産を譲渡したときの譲渡所得の計算の仕方について説明します。この譲渡所得の計算の仕方が、譲渡所得を求めるうえでの大前提となります。
この計算式が譲渡所得を求める際の基本です。
この譲渡所得に対して税率を乗じて具体的な税額を計算します。
ところで、譲渡所得を求めるときに1つ頭を悩ませることがあります。それは不動産を取得したときの取得費が不明なときです。
例えば、建物を購入したときの売買契約書を失くしてしまったり、かなり昔に不動産を取得していると不動産の取得価額が不明なことがよくあります。
また、親が亡くなり相続が発生したときに、親がその不動産をいくらで購入したかが相続人にはわからないことも珍しくありません。
このようなときには不動産の取得費がわからず、空き家となってしまった不動産を売却にするとき問題になります。
概算取得費5%で計算する方法
不動産の取得費が不明なときに用いられる最も一般的な方法は概算取得費を利用して譲渡所得を求める方法です。
具体的には、不動産の売却価格に5%乗じた金額を概算取得費とし、譲渡所得を計算します。
ただこの方法で譲渡所得を計算してしまうと、不動産の売却側にとっては困ったことが生じてしまいます。
その困ったこととは、売却代金のうちの約95%が譲渡所得となり所得税も多額になってしまう可能性があることです。これは不動産の売却側にとっては、非常に頭の痛いことになるかもしれません。
例えば不動産を5000万円で売却したとします。この場合、取得費は5000万円×5%=250万円となり、譲渡所得は4,750万円となります。この金額に対して税率を乗じて実際に納付する所得税を計算します。
取得費が明らかなときに比べて、この譲渡所得4,750万円はあまりにも多額過ぎるのではないでしょうか。
市街地価格指数を基に計算する方法
譲渡した不動産の取得費が不明なときに、その取得費を概算取得費を以って計算するのではなく、市街地価格指数を用いて計算する方法もあります。
この市街地価格指数とは、一般財団法人不動産研究所が公表している指数で、全国主要都市内で選定された宅地の調査地点について不動産鑑定士が年2回価格調査を行い指数化したもの。
市街地価格指数を基に取得費を計算するときの流れは、概ね次のようになります。
ステップ1 建物の取得費の計算
土地と建物を一括譲渡した際に各々の取得費が不明なときは、まず先に建物を(一般財団法人建設物価調査会が発行している)着工建築物構造単価を基に算定する。
ステップ2 土地の取得費の計算
次に、土地の取得費は譲渡価額の総額から建物の取得費を控除し、土地の譲渡価額を算定したうえで、譲渡時に対する取得時の市街地価格指数の割合を乗じて価額を算定する。
そのうえで、譲渡対価から建物と土地の取得費を控除して譲渡所得を計算する。
・譲渡日:平成8年7月
・取得日:土地及び建物 昭和48年8月
・建物の延べ面積:100㎡
・建築物単価:100,000円/㎡
・譲渡時の市街地価格指数:6,826
・取得時の市街地価格指数:5,241
※ 建物の減価償却費については、説明を簡略化するために考慮外としています。
譲渡所得:50,000,000円-(10,000,000円+30,711,983円)=9,288,017円
概算取得費との比較
計算例では市街地価格指数を用いた取得費の計算方法について説明しましたが、概算取得費5%で計算すると取得費は次のようになります。
このことから、ここで説明した概算取得費を用いて不動産の取得費を計算した場合と市街地価格指数を用いて計算したときには譲渡所得が約38,211,983円違うことになります。※
※(10,000,000円+30,711,983円)- 2,500,000円≒38,211,983円
市街地価格指数を利用するときには注意が必要!
前述しましたが、市街地価格指数を基に取得費を計算する方法は常に認められているわけではなく、その利用の場面は限定的と考えられています。
市街地価格指数を基に取得費を計算するときには、その土地が次の点を満たしているか否かは事前に必ず確認すべきです。
- 宅地であること
- 取得価額が不明であること
- 地価が市街地価格指数と同じ水準で推移していること
重要なことですので繰り返しますが、市街地価格指数を基に取得費を計算する方法は安易に適用するべきではなく、必ず譲渡所得に詳しい税理士に相談することを強くお勧めします。
譲渡所得に関する特別控除については、リンク先で説明しています。