公的機関、団体の主催や、各地域主催の無料相談会が開催されることがあり、相談対応することが多くあります。
相談対応のときには、相続に関する相談は多いのですが、なかには相続税の申告をご自身で申告されようとする方もいらっしゃいます。
ここでは、相続税の申告をご自身でやってはいけない3つの理由について税理士としての経験則に基づきお伝えします。
理由1 相続財産の評価が難しすぎる
相続税の申告で肝の1つになるのは、相続財産の評価だと思います。相続税は相続財産の評価額を元に計算しますので、相続財産が「いくら」で評価されるかが1つのカギになります。
ですが、相続財産の評価がとても難しい。
例えば、土地の評価について言うと、税理士にとっても評価が難しい土地があります。況や、相続財産の評価に不慣れな一般の方にとっては、言うまでもないこと。
相続に関する入門書籍には、あたかも初心者の方でも容易に相続財産を評価ができるような説明がありますが、ハッキリ申し上げると、あれはミスリードだと思います。
土地の評価が難しい
相続財産に含まれる土地の評価が難しいのは、土地が歪な形をしていることが多いためです。正方形や長方形のような単純な土地はなかなかありません。
歪な形をした土地を評価するには、専門知識と経験、スキルが必要です。
長方形の土地があったとしても、名義が共有になっていたり、土地の上に(他の親族が住んでいる)複数の建物が立っていたりと、イレギュラーなことも多くあります。
いずれにせよ、相続人の方にとって土地を適切に評価することはかなりハードルが高いと思います。土地を適切に評価しないと、必然的に相続税にも影響があります。
このように土地の評価は相続税に強い税理士でも判断がわかれることがあります。
株式の評価が難しい
相続財産に非上場会社の株式が含まれているときは、その株式の評価も専門的な知識が必要になります。
仮に相続人の方が簿記の知識を持っていたとしても、なかなか歯が立たないはず。
ファイナンス系の知識があって、なおかつ実践の経験もあれば株式評価の計算式を見れば、理解できる可能性はあります。
いずれにしても、相続財産に非上場株式が含まれているときには、その評価は(一般の方にとっては)一筋縄ではいかないと思います。
理由2 ミスがあったとき相続税の増減が大きすぎる
相続税の申告を自分でやることを勧めない2つ目の理由は、ミスがあったときに相続税の変動が大きすぎるからです。
特に、文京区などの山手線内側の土地(路線価)は高額なことが多く、(高額であるがゆえに)少しミスするだけで高級車1台分ほどの税額は軽く変動してしまいます。もちろん、もっと大きな金額の変動があることもあります。ミスがあれば、本当に恐ろしいです。
理由3 節税方法に精通していない
相続税の申告を自分でやることを勧めない3つ目の理由は、相続税の節税方法に精通していない点です。
実際に、公的な団体主催の無料相談会などで相談対応していて感じるのは、相続税を節税する方法をご存じない方も多くいらっしゃるということです。
ただ一般の方が節税方法に精通していないのはやむを得ないことだと思いますが、知らずに申告すると、税理士報酬を節約するために自分で申告するはずが、節税できずに却って大きな支出になり、本末転倒になってしまいます。
文京区など土地の価格(路線価)の高いエリアほど、節税方法を活用することで、その効果が大きくなります。実際に高級車1台分ほどの金額は節税可能ですし、実際にはもっと大きな金額の節税も可能です。
相続税申告を自分でやってはいけない理由のまとめ
以上、相続税の申告を自分ではやってはいけない3つの理由について説明しました。ミスをすると、本来支払う必要のない税額まで支払う可能性もありますし、申告後に追加で納税する可能性もあります。
確かに税理士に相続税申告の依頼をすると税理士報酬が発生してしまいますが、その何倍以上もの金額を節税することが可能だと思いますし、私の経験則からお伝えすると、実際には税理士報酬の20倍以上の金額を節税できることも珍しくありません。
ですので、トータルの支出を減らすためにも、相続人の方の時間と労力を減らすためにも、税務署からの指摘を回避するためにも、相続税の申告に関しては税理士に依頼された方が良いと思います。